早く生まれたらどう育つ?
「この週数で生まれたら将来どうなるんですか?」
この質問は切迫早産の両親に説明をすると、よく聞かれます。世の親達が「我が子が未熟児になる」事に漠然とした不安を抱えるのは仕方ないことです。誰でも経験のない事は不安なのです。「早く生まれたらどう育っていくか」はデータがしっかり出ているので、大切なのは、そのデータを切迫早産の両親にまず知ってもらう事です。
日本は新生児医療において世界のトップランナーです。2019年の人口動態統計によると日本の新生児死亡率は0.9人(/1000人)と世界トップクラスの成績です。さらに驚く事に、日本はこの世界最低の新生児死亡率を40年以上維持しています。この背景には周産期医療の目まぐるしい進歩と共に極低出生体重児(出生体重1500g未満)や超早産児(在胎週数28週未満)の生命予後が改善した事も大きいと言えるでしょう。
未熟児治療成績の国際比較
日本全国の周産期センターが参加するNeonatal Research Network of Japan(NRNJ)は極低出生体重児を対象に生存率、合併症罹患率、予後などを2003年から登録を行い、国内唯一の新生児データベースです。
NRNJを含む10カ国(オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、フィランド、イスラエル、スウェーデン、スイス、スペイン、イギリス)のデータベースで予後を国際的に比較したInternational Network for Evaluating Outcomes of Neonates (iNeo)の比較結果1を図1に示しています。
予後は死亡、慢性肺疾患、脳室内出血、未熟児網膜症のいずれかを認めるものを合わせた結果となっていますが、我が国(NRNJ)は最も症例数が多いに関わらず死亡・合併症が少なく、国際的に治療成績が良好と言えます。
日本の極低出生体重児の治療成績
NRNJデータベースに登録された2003年〜2015年出生の極低出生体重児の3歳時予後も報告されています2。
まず在胎週数別の3歳時死亡率です(図2)。早産児のうち在胎28週以降は平均10%以下ですが、超早産児のうち前半の在胎22~24週は他の週数と比較しても高い事がわかります。尚、この図では36週以降に死亡率が上昇していますが極低出生体重児を対象とした調査のため子宮内発育遅延児(週数の割りに体重が小さい子)が多い事が理由に挙げられます。
次に3歳時の在胎週数別の新生児合併症を含んだ成績を図3に示します。死亡と神経学的障害(neurodevelopment impairment; NDI)を加えた予後不良の割合は在胎週数が小さいほど高いです。尚、神経学的障害は脳性麻痺、失明、補聴器使用、発達遅滞のいずれか1つ以上の障害を認めたものと定義しています。
特に在胎22週では死亡とNDIの割合が65.6%であり、世界トップレベルの周産期医療を誇る日本でも在胎22週はまだまだ課題が残る結果となっているのです。
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